特別インタビュー

《キトーのプロフェッショナルが答える!》鉄道業界におけるクレーンの進化とは?見直さずに使い続けるリスクと、今できること

鉄道業界におけるクレーンは、長きにわたり使用されており、
中には30年以上前から稼働し続けている設備も少なくありません。
一方で、技術の進化はクレーンにも例外なく及んでおり、
従来は当たり前とされてきた運用が実は非効率であったり、
法的なリスクを内包しているケースも見受けられます。

また、いざ見直しを検討するにも、高い安全性と信頼性が求められる鉄道業界のスタンダード
対応できるクレーンメーカーや人材は限られているのが実情です。
緻密な事前準備や関係各所との調整までを含めて任せられる相談先の選定に悩み、
「どこに相談すべきか分からない」との声も少なくありません。

 ———今回は、鉄道業界に特化して現場に深く入り込み、
クレーンの更新や運用の見直しに数多く関わってきた技術営業担当と技術サポートのお二人に
インタビューを実施。現場で実際に見えている課題や、更新を進める上での障壁、
そしてクレーン技術の進歩によってどのような選択肢が新たに生まれているのかについて、
熱い思いとともに語ってもらいました。


お話を聞いたのはこの方々!

望月 セールスエンジニアリンググループ 営業(西日本)

経歴
1990年入社。自動倉庫部門の営業から始まり、ホイスト部門移動後は、特殊案件営業、仙台営業所長、韓国駐在、岡山営業所長、四国営業を経て、2025年よりセールスエンジニアリンググループに所属。主に西日本エリアの鉄道業界を担当。
趣味:寺院仏閣巡り
休日の過ごし方:水泳や水彩画を楽しんでいます

福永 セールスエンジニアリンググループ 技術サポート

経歴
1994年入社。約10年クレーン設計に携わった後、市場開発やインド駐在、設計窓口業務などに従事。2019年のセールスエンジニアリンググループ発足時より、セールスエンジニアとして鉄道・電力などインフラ業界を担当し、設計のバックグラウンドを活かしたクレーンに関する技術的なサポートを行う。
趣味:プロ野球観賞(ヤクルトファン)、お城など歴史的名所を訪れること
休日の過ごし方:夏も冬も、早朝からテニス!

目次

1.     鉄道業界に特化した営業とは?

2.     お客様からよくあるご相談内容

3.     鉄道業界におけるクレーン業者選びの壁

4.     鉄道業界向けクレーンの技術の進化~効率性・安全性・コスト~

5.     まとめ:我々が目指す、鉄道業界におけるクレーンの未来

1.鉄道業界に特化した営業とは?

―――鉄道業界に特化した営業として、どのような役割を担っていますか?

福永
鉄道の現場では「安全対策としてクレーンや巻上機を更新したいが、どこに相談したら良いか分からない」というお声をよく耳にします。私たちセールスエンジニアリンググループでは、そのようなお悩みを持つ全国の鉄道業界のお客様を対象として、クレーンの新規導入および既設の更新、点検依頼などへの対応を行っています。

―――鉄道業界のお客様に対して、どのように提案を行っていますか?

望月
お客様によって提案内容は様々です。すでに仕様が固まっているケースもありますが、まずはお客様の現場や設備の状況を伺いながら現場ごとの課題を整理し、実現に向けた具体的な形に落とし込んだうえで、ご提案を行います。過去の事例を参考にしていただくことが多いため、これまで東日本エリアで培ってきた事例をもとに西日本エリアのお客様にも展開しているところです。

―――「業界特化」という役割において求められるスキルを教えてください。

望月
鉄道業界では大容量や複数クレーンの同時制御といった特殊なクレーンが使用されることが多いため、製品知識はもちろんのこと、エンジニアリング力―――相談~設計~製造~納入~点検といった一連の工程そのものを設計できる力が求められます。また、複雑な課題を見極めて最適な提案をする技術力が必要ですので、これまでのバックグラウンドが特に活きていると感じます。鉄道会社様のみならず、エンジニアリング会社様や鉄道専門商社様と連携することも多いですね。

2.お客様からよくあるご相談内容

―――お客様は、どのようなきっかけでキトーにご相談されることが多いですか?

福永
最も多いご相談のきっかけは、クレーンの老朽化です。高度経済成長期やバブル期に鉄道インフラが一斉に整備された影響で、当時導入されたクレーンも更新時期を迎え、その更新や点検のタイミングでお問合せをいただくケースが多くあります。またその際、鉄道業界におけるクレーン更新の実例をご紹介すると、前向きに検討いただけるケースが多いですね。クレーンの使用用途はどの鉄道現場でも大きくは変わらないので、実例があることで更新後のイメージが持ちやすいのかもしれません。

―――更新と新規設置では、相談内容にどのような違いがありますか?

福永                              課題が明確になっているかどうか、という点ですかね。新規の場合は「こんなことがしたい」という漠然とした構想の段階から、クレーンの仕様をオーダーメイドするので、仕様書作りをサポートするような形に近いですね。 それに対して更新の場合は、老朽化による更新の依頼が大半ですので、課題が具体化されていることが多いです。ただ、 既設クレーンの設置時には無かった技術をご紹介すると驚かれ、まったく新しい仕様で納入することもありますよ。                         

―――新規設置では、鉄道業界の進化に伴う新しい形のクレーンの需要もありそうですね。

望月
そうですね。私が担当している西日本エリアの鉄道関連企業様の中には、新しい設備や工法を積極的に取り入れようとする動きもあり、従来のクレーンの使い方にとらわれない発想でのご相談をいただくこともあります。バッテリー式車両の普及に伴うバッテリー交換用途や、リニア関連設備など、これまで想定していなかった用途や分野での需要は、今後も増えていくと考えています。鉄道業界の進化に伴って求められる用途や役割も変化しており、クレーンの技術も進歩していますので、こうした変化をぜひ知ってほしいですね。

3.鉄道業界における「クレーン業者選びの壁」

―――鉄道の現場で共通している、クレーンに関する悩みは何ですか?

望月
クレーンメーカーも設置業者も減少傾向にある中で、既設クレーンのメーカーが廃業してしまい、「良い業者がいなくて困っている」といった点が共通していると思います。

―――鉄道業界では特殊なクレーンが多く使われているので、クレーン業者も限られてしまうのでしょうか?

福永
もちろんそのような側面もありますが、納入だけでなく、それまでの準備の段階で綿密な打ち合わせや法令関係の書類が必要になるのが鉄道業界の特徴です。そのスタンダードに寄り添えるメーカーはかなり少数ですので、メーカー側からお断りされるケースもあるようですね。私たちは、そのような業界のスタンダードを理解した上で伴走することを使命としておりますので、面倒なことほど一度相談してみてください、ということを伝えたいです。

―――お客様とやり取りをするうえで特に意識していることはありますか?

望月                             鉄道業界特有の綿密な事前準備や調整は、お客様にとっても負担になることがあると感じています。もちろん、コンプライアンスに対するリテラシーの高さに基づいた非常に重要なことですので、私たちとしては課題を素早くキャッチする・準備を徹底する・提案に柔軟性を持たせるなど、基本を大切にしながら全体がスムーズに進行するように心がけていますね。

4.鉄道業界向けクレーンの技術の進化 ~効率性・安全性・コスト~

―――クレーンはこの30年でどのように変わりましたか?

福永
手動のホイストなどにも言えることですが、機械的な部分は実はあんまり変わっていないんですよね。明確に進化しているのは制御技術・通信技術です。

例えば、150mあるロングレールを搬送する際には橋形クレーン数台を同調させる制御が必要ですが、昔は作業員がケーブルを1台1台に繋げに行って同調操作をしていました。今では無線によって手元の押しボタン操作1つで同調させることができるようになり、ケーブル接続の手間が削減されただけでなく、ケーブルの絡まりや断線のリスクも排除できています。

―――無線によって同調操作が安全で効率的になったのですね。

福永
現在でもケーブルをわざわざ繋ぎに行っている作業を目にすることがあるので、無線化させてより安全かつ効率的に運用してほしいな、と思いますね。また安全面で特に気になるのが、吊るワークの変化に対して、クレーンの定格荷重を見直す必要性が十分に意識されていないケースがあることです。

30年前に設置されたクレーンが現役であっても、時代と共に吊るワークは変化しており、その重量も変わっています。にもかかわらず、「だいたい同じ大きさのワークだから、吊れるだろう」「使えているから問題ない」といった認識のまま運用していると、実は定格荷重をオーバーしている場合もあり、思わぬ事故や故障に繋がる要因になりかねません。

現在では、過負荷を検知して巻き上げ操作を止める機能や、実際にクレーンにかかっている荷重を手元で把握できる技術など、現場に応じた様々な安全対策があるので、こうした見直しは十分に可能です。
望月
鉄道現場ではレールなどの長尺物を複数台のクレーンで吊ることが多いのですが、従来は各クレーンにかかる荷重を正確に把握することが難しい状況でした。しかし、現在の制御技術を用いれば支点ごとの荷重を管理して均等に吊ることが可能になっています。

その結果、実荷重を把握したうえで、実際の負荷に即した適正な運用や定格荷重の見直しも行えるようになりました。さらに、この定格荷重の見直しは、過負荷による場合だけでなく、実は“逆のケース”においてもお客様にメリットがあるんですよ。

―手元でつり荷重を把握できる製品ラインナップ―

―――“逆のケース”とはどういった意味でしょうか?

福永
例えば、1本の長尺レールを5台のクレーンで吊る状況において、実際の負荷は1台あたり3t程度であるにもかかわらず、各クレーンの定格荷重が10tである場合。年次点検では10tのウェイトを用意・運搬する必要があり大きなコスト負担となりますよね。

ここでクレーン1台あたりにかかる実荷重を把握して適正な定格荷重に見直しておくと、3tのウェイトで点検が可能になり、“逆のケース”———すなわちクレーンのオーバースペックに起因する年次点検をはじめとしたランニングコストの無駄を削減できます。

バブル期に「大は小を兼ねる」という考え方で導入されたクレーンは現在でも多く残っていますが、点検や検査は毎月・毎年のことですので、これまでお話した現代の技術を用いて定格荷重や運用そのものを見直す価値は十分にあると感じています。

5.まとめ:我々が目指す、鉄道業界におけるクレーンの未来

―――鉄道業界のお客様から評価をいただく点を、改めて教えてください。

望月
例えば製品デモ一つを取っても、安全第一の鉄道業界では打ち合わせや調整を複数回重ねながら進めるケースも多く、そうした積み重ねが信頼につながり、継続的なご依頼をいただけている点は一つの評価と捉えています。

まずはなんでもご相談いただきたい、というスタンスですので、お客様が検討されていることやお困りごと、時にはおすすめの飲食店まで、幅広くお話しいただく中で最適な進め方や選択肢を一緒に整理していく関係性を大切にしていますね。西日本エリアにおいても、こうした信頼関係の積み重ねから今後ご相談の機会を広げていければと思います。

福永
ご提案においては、お客様の要望をそのまま実現するだけでなく、より良い方法や、コストを抑えた選択肢も含めて提示することを意識しています。その際には、これまでの営業経験や設計の知見をもとに、法令・現場条件・仕様・コストを総合的に判断し、最適なバランスを見極めることが重要になります。

結果、必ずしもクレーンが最適解ではないこともあります。(笑)
製品ありきではなく、お客様にとって最も合理的で納得感のある形をご提案できている点が評価につながっていると感じますし、そうでありたいと自身も思っています。

―――今後どのような価値を提供していきたいですか?

望月
私たちのクレーンを使うことによって、お客様の作業全体の時間短縮に繋がるようにしたいです。鉄道業界でのメンテナンスや点検作業は、時として終電~始発間に行われることもあるので、できるだけ早く作業が終わるよう、新しい製品やシステムを一緒に作ることを通して社会に貢献していきたいです。
福永
安全第一の鉄道業界においては最新技術に慎重な姿勢を示されることもありますが、むしろ安全性が高くなっていることを認知してもらえるよう、信頼関係を構築していきたいですね。鉄道は輸出産業という位置づけでもあるので、今後は日本の鉄道技術と共にクレーン技術も広まるように邁進したいと思います。

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