漁業船団をバックアップするキトーホイスト
今回の取材先は、宮城県石巻市にある聖人堀鐵工所(しょうにんぼりてっこうしょ)。海外まき網漁船に搭載する小型のアルミ船を造っています。東日本大震災から12年が経ったこの3月、石巻を訪問して、海外まき網漁やアルミ船の特長について、柿沼孝使社長からお話をうかがいました。
海外まき網漁の母船は、3~4艘のボートを搭載して外洋に出て行きます。ボートの中で一番大きな1号艇は、母船の船尾に積まれ、かつおの群れが発見されると、網の片方をつけて海に下ろされます。母船が旋回して、かつおの群れを網で取り囲んだら、素早くリングに通したワイヤで網の裾を引き締め、袋状にして閉じ込めます。
聖人堀鐵工所では、この海外まき網船搭載艇を造っています。搭載艇は、軽く、錆びにくく、頑丈であることが求められます。1枚のアルミ板から自動切断機で船の骨と外板の部分を切り出し、部材によっては手作業で行うこともあります。アルミは鉄に比べてやわらかい特性のため、特に溶接はむずかしく、技術や経験が問われます。船底の板に格子状の骨組みを溶接し、外板が貼り付けられ、エンジンや操舵室を取り付ければ完成。腕利きの職人たちの手によって、頑丈な船に仕上がります。
船の骨格と外側を形成する「船殻(せんこく)」と、エンジンや各種装備を取り付ける「艤装(ぎそう)」の工程があり、それぞれに4〜6人がチームを組んで完成まで関わります。1艘を仕上げるのに5か月くらいかかり、1号艇から5号艇までの4艘(漁師さんは縁起を担ぐので、4号艇はありません)をセットにして、北海道から九州まで全国のお客様にお届けしています。
震災から12年が経ちました。石巻のみなさんも、私たち聖人堀鐵工所も、大津波の被害を乗り越えて、がんばっています。
柿沼孝使社長(写真右)