
クレーンの定格荷重・定格総荷重とは? 吊り上げ荷重についても解説
土木工事や建設現場において、資材の搬送、高所への積み上げなどを行う際に使用されるクレーン。
このクレーンには、安全に使用するための定格荷重・定格総荷重と吊り上げ荷重が定められています。また、これらの荷重は、クレーンの種類や大きさによって異なります。
規定の荷重を超える負荷が生じると、リンクチェーン(汎用チェーン)やワイヤロープの強度が低下して事故が発生するリスクがあるため、事前に荷重を確認して作業を行うことが重要です。
しかし、定格荷重・定格総荷重と吊り上げ荷重にどのような違いがあるのか、明確に理解できていないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、クレーンの定格荷重・定格総荷重をはじめ、混同しやすい吊り上げ荷重について解説します。
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定格荷重・定格総荷重

画像引用元:厚生労働省『小型移動式クレーンに関する知識』
定格荷重と定格総荷重は、クレーンで吊り上げられる荷重のことを指します。
この荷重は、ジブ(※1)の傾斜角や長さによって変化します。定格荷重と定格総荷重の違いは、“吊り具の質量を含めるか否か”という点です。
ここでは、定格荷重と定格総荷重について解説します。
※1・・・ジブとは、クレーンの上部旋回体の一端を支点とした腕部分のこと。
出典:厚生労働省『小型移動式クレーンに関する知識』
定格荷重
定格荷重とは、クレーンで重量物を吊り上げる際に、負荷をかけられる最大の荷重から、吊り具の質量が差し引かれた値を指します。フックやリングなどの吊り具の質量が含まれていないため、実際に吊り上げできる荷重と判断することが可能です。
また、ジブの傾斜角や長さによって吊り上げられる荷重が変わり、傾斜角が少なく、長さを伸ばすほど荷重が小さくなります。
ただし、吊荷作業によって吊り具を付け替える場合には、定格荷重が変動するため注意が必要です。
出典:厚生労働省『小型移動式クレーンに関する知識』
定格総荷重
定格総荷重とは、フックをはじめとする吊り具の質量を含み、吊り上げできる荷重を指します。
定格荷重のように、ジブの傾斜角や長さによって荷重は変化しますが、吊り具の質量を含んでいるため、より正確な荷重を把握することが可能です。
なお、クレーンの製品情報には、吊り具の質量を含まない定格荷重で記載されていることが一般的です。
出典:厚生労働省『小型移動式クレーンに関する知識』
吊り上げ荷重
吊り上げ荷重とは、クレーンが吊り上げられる最大の荷重を指します。
フックやリングなどの吊り具の質量を含んでいるため、吊り具の質量と荷の荷重を含めて荷重値を判断する必要があります。
たとえば、吊り上げ荷重が2.93tと記載されている場合、吊り具の質量を含めて2.93tまで吊り上げられるということです。ただし、移動式・拡幅式のクレーンの場合、吊り上げ荷重は以下のような状態を指します。
▼移動式・拡幅式のクレーンの吊り上げ荷重

画像引用元:厚生労働省『小型移動式クレーンに関する知識』
- 傾斜角を最大にする
- ジブの長さを最短にする
- アウトリガー(※2)を最大にする
なお、前述した定格総荷重の最大値と、吊り上げ荷重の値は同じになります。
※2・・・アウトリガーとは、車体から張り出して設置される吊り荷による転倒を防止する装置のこと。
出典:厚生労働省『小型移動式クレーンに関する知識』
定格荷重・定格総荷重の注意点
吊り上げ荷重は、クレーンが吊り上げられる最大の荷重を指すのに対して、定格荷重・定格総荷重はクレーンの状態によって荷重が異なる点に注意が必要です。
定格荷重・定格総荷重は、ジブの長さや傾斜角、アウトリガーの張り出しによって荷重が変わります。
なかでも、アウトリガーや拡幅式のクローラを有する移動式クレーンの場合は、アウトリガーまたはクローラを最大限に張り出した状態で、定格荷重を下回る必要があります。
▼クレーン等安全規則第70条の5(一部抜粋)
事業者は、アウトリガーを有する移動式クレーン又は拡幅式のクローラを有する移動式クレーンを用いて作業を行うときは、当該アウトリガー又はクローラを最大限に張り出さなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則』
実際にクレーンを使用する際は、吊り上げ荷重だけでなく、定格荷重・定格総荷重を確認しておくことが重要です。
出典:厚生労働省『小型移動式クレーンに関する知識』/e-Gov法令検索『クレーン等安全規則』
定格荷重、定格総荷重、吊り上げ荷重のまとめ
定格荷重、定格総荷重、つり上げ荷重はそれぞれクレーンが吊り上げられる荷重を示すことは共通していますが、それぞれの違いをまとめると下表のようになります。
定格荷重 | 定格総荷重 | 吊り上げ荷重 | |
|---|---|---|---|
フックをはじめとする吊り具を含むか | 含まない | 含む | 含む |
ジブの傾斜角や長さによって荷重は変化するか | する | する | しない |
天井クレーンの場合に、各荷重が使われる場面【設置・法規・資格】
天井クレーン、橋形クレーンといったジブを保有していないクレーンや傾斜度によって荷重が変わらないクレーンは、基本的に「定格荷重」と「吊り上げ荷重」が使用され、「定格総荷重」はほとんど使用されません。
定格荷重が使用されるポイント
製品の選定のタイミングではつり荷と使用する吊り具が、定格荷重を下回るように製品の選定する必要があります。クレーンに定格荷重を超える荷重をかけることは、クレーン等安全規則の23条によって禁止されています。
▼クレーン等安全規則第23条の5(一部抜粋)
事業者は、クレーンにその定格荷重をこえる荷重をかけて使用してはならない。
引用元:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則』
また、事業者がクレーンを用いて作業を行う時は、クレーンの運転者および玉掛をする人が、クレーンの定格荷重を常時知ることができるように、表示させることが必要です。
▼クレーン等安全規則第24条の2(一部抜粋)
事業者は、クレーンを用いて作業を行うときは、クレーンの運転者及び玉掛けをする者が当該クレーンの定格荷重を常時知ることができるよう、表示その他の措置を講じなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『クレーン等安全規則』
吊り上げ荷重が使用されるポイント
クレーンの設置や資格にかかわる基準は、吊り上げ荷重で分類されています。
「設置報告書」や「設置届」といった法規関連の申請の場合も、労働基準監督署に吊り上げ荷重を申請する必要があります。
よくある質問
Q. | 天井クレーンでは、定格荷重・定格総荷重・つり上げ荷重のうち、どれを確認すればよいですか? |
|---|---|
A. | 天井クレーンや橋形クレーンでは、基本的に「定格荷重」と「吊り上げ荷重」を確認します。 天井クレーンはジブを持たない構造で、傾斜角等によって荷重が変化しないため、移動式クレーンで使われることが多い「定格総荷重」が実務上使われる場面はほとんどありません。 製品の選定や日常の使用においては、主に定格荷重を基準に、安全に使用できるかを判断してください。 |
Q. | クレーン本体の銘板に表示されている荷重は、どの荷重を指していますか? |
|---|---|
A. | 多くの場合、クレーン本体の銘板には「定格荷重」が表示されています。 メーカーによって表記方法に違いがある場合もありますが、一般的には、実際の製品仕様として確認すべき荷重=定格荷重であるケースがほとんどです。実際の使用や運用にあたっては、銘板の表示内容を確認し、定格荷重を超えないよう注意する必要があります。 |
Q. | つり上げ荷重は、どのような場面で確認する必要がありますか? |
|---|---|
A. | つり上げ荷重は、クレーンの設置や法規・資格に関する基準を判断する場面で使用されます。 クレーンの設置報告書や設置届などの法規関連の申請では、つり上げ荷重を基準に区分されます。また、クレーン操作や玉掛作業などの資格要件も、つり上げ荷重によって分類されています。 |
まとめ
この記事では、クレーンの荷重について以下の内容を解説しました。
- 定格荷重・定格総荷重
- 吊り上げ荷重
- 定格荷重・定格総荷重の注意点
- 天井クレーンの際の各荷重の使われ方
定格荷重・定格総荷重は、ジブの長さや傾斜角などによって変わる荷重を指すのに対して、吊り上げ荷重はクレーンが吊り上げられる最大の荷重を指します。
また、定格荷重にはフックやリングなどの吊り具の質量が含まれませんが、定格総荷重と吊り上げ荷重には吊り具の質量も含まれています。
実際にクレーンを使用する際は、吊り上げ荷重だけでなく、定格荷重・定格総荷重についても確認しておくことが重要です。
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